水道料金は今後値上げされるのか?老朽化インフラと自治体財政の影響
結論から言うと、水道料金は全国一律で一斉に上がるわけではありませんが、今後は値上げ圧力が強い自治体が増える局面に入っています。
背景にあるのは、古い水道管や浄水施設の更新費用が重くなる一方で、人口減少や節水の定着で料金収入が伸びにくいことです。実際に、すでに料金改定を決めた自治体も出ています。
この記事は2026年4月22日時点の国土交通省や自治体の公表資料をもとに、何が起きているのかを整理します。
- 全国で一律の値上げ決定は出ていない
- ただし、老朽化した管路の更新と耐震化の遅れで、料金見直しの必要性は高まっている
- 値上げの有無や時期は自治体ごとに異なる
- 家庭では、基本料金の見直しと従量料金の改定の両方を確認する必要がある
ここがポイント: 水道料金の焦点は「すぐ全国一斉に上がるか」ではなく、自分の自治体が今後3年から5年で料金見直しに入るかです。
何が変わるのか
まず押さえたいのは、水道料金は国が一律に決める仕組みではなく、各自治体や広域水道事業者がそれぞれの経営状況を踏まえて見直すという点です。
国土交通省は2024年12月に「水道カルテ」を公表し、料金回収率と耐震化率の見える化を始めました。これは、料金だけでは給水に必要な費用を賄えていない事業者や、耐震化が全国平均を下回る事業者が少なくないことを前提にした動きです。
全国ベースで見えている課題
国の資料では、次の数字が目立ちます。
- 令和4年度時点で、法定耐用年数40年を超えた管路の割合である管路経年化率は23.6%
- 同年度の管路更新率は0.64%にとどまる
- 基幹的な水道管のうち、耐震性のある管路の割合は42.3%
- 国は、水需要の減少に応じた経営悪化や人材不足も同時進行の課題として示している
数字の意味は単純です。古い管は増えているのに、更新のペースは遅い。しかも、その費用を支える収入は増えにくい。これが、今後の料金見直し圧力の土台になっています。
対象者は誰か
影響を受けるのは、すでに料金改定を決めた自治体の利用者だけではありません。今は料金据え置きでも、更新投資が重い地域では今後の審議対象になりやすいためです。
特に確認したいのは次の層です。
- 戸建てやマンションで毎月の水道・下水道料金を自分で払っている世帯
- 人口減少が進み、利用者数の減少で料金収入が落ちやすい地域の住民
- 高度成長期に整備した施設を多く抱える自治体の利用者
- 水道料金だけでなく、下水道使用料も同時に見直される地域の世帯や事業者
見落としやすい点
水道料金の話でも、請求書では下水道使用料と合算される自治体があります。値上げ報道を見たときは、
- 水道料金だけの改定か
- 下水道使用料も同時改定か
- 基本料金だけ上がるのか
- 従量料金まで変わるのか
を分けて見る必要があります。
いつから上がるのか
全国共通の開始日はありません。実際の改定時期は自治体ごとにばらつきます。
すでに実施・決定された例
以下は、老朽化や収支悪化を理由にした近年の公式発表例です。
| 自治体・事業者 | 開始時期 | 主な内容 | 何が示唆されるか |
|---|---|---|---|
| 姫路市 | 2025年4月1日 | 水道料金の平均改定率12.1%、下水道使用料の平均改定率15.8% | 水道管・下水道管の更新と耐震化の費用確保が理由。水道だけでなく下水道も一緒に上がる例 |
| 日立市 | 2026年4月1日 | 水道料金の平均改定率20% | 人口減少による料金収入減、老朽化対策、物価高が重なると改定幅が大きくなりやすい |
| 沖縄県企業局 | 2024年10月1日、2026年4月1日、2029年3月1日以降 | 県企業局の用水料金を段階改定。2026年4月1日からの徴収単価は減免後130.49円/㎥ | 広域の用水料金改定が、市町村側の料金判断に波及しうる |
この3例だけでも、「将来そのうち」ではなく、すでに改定は各地で進み始めていることが分かります。
生活への影響
家計への影響は自治体ごとの料金表で大きく違います。ただ、見方のポイントは共通です。
家庭で負担が増えやすいパターン
- 基本料金が引き上げられる
- 基本水量が廃止される
- 使った分に応じる従量料金の単価が上がる
- 水道と下水道が同時に改定される
たとえば姫路市では、料金改定にあわせて基本水量の廃止も行われました。これは、使用量が少ない世帯でも請求の出方が変わりやすいということです。
一方で、日立市は平均改定率20%としていますが、一般家庭向けでは30立方メートル/月程度までの利用者負担が平均改定率未満になるよう配慮するとしています。つまり、同じ「20%値上げ」でも、すべての世帯が一律20%増になるわけではありません。
必要な対応
水道料金の将来を気にするとき、いちばん実務的なのは「全国ニュース」より自分の自治体の資料を定点確認することです。
まず見る場所
- 自治体の上下水道局サイトの「料金改定」「審議会」「経営戦略」
- 自治体議会の議案、予算案、条例改正案
- 国土交通省の「水道カルテ」
- 広域水道や県企業局から受水している自治体なら、その上流の料金改定情報
家庭で確認したい項目
- 自宅のメーター口径
- 1か月あたりのおおよその使用水量
- 水道料金と下水道使用料の内訳
- 改定時期が「使用開始日基準」か「検針日基準」か
- 減免や激変緩和措置の有無
注意点
ここは誤解しやすいところです。
- 「老朽化している=必ずすぐ値上げ」ではありません。 自治体によっては内部留保、企業債、一般会計繰入、広域連携などで時期をずらします。
- 「値上げなし=安全」でもありません。 料金据え置きの裏で更新投資が先送りされると、後の改定幅が大きくなることがあります。
- 小規模事業者ほど、人口減少や人材不足の影響を受けやすいという国の整理があります。
- 国の基本方針では、水道料金は将来の更新需要を踏まえ、おおむね3年から5年ごとに検証し、必要に応じて見直す考え方が示されています。
今後の注目点
水道料金の次の焦点は、単なる値上げの有無ではありません。
- 自治体が更新費用と料金の関係をどこまで住民に開示するか
- 水道カルテの公表を受けて、料金回収率の低い事業者がどう動くか
- 下水道使用料や県の用水料金改定が、家庭の請求額にどう波及するか
- 耐震化と老朽管更新を先送りしないために、どの自治体が先に料金改定へ踏み切るか
「水道料金は今後上がるのか」という問いへの現実的な答えは、「上がる自治体は増える公算が大きい。ただし、時期も幅も自治体ごとにかなり違う」です。 次に見るべきなのは、国全体の空気ではなく、自分の自治体の審議会資料と料金表です。
