介護保険料はなぜ上がるのか。2024年度からの改定と自治体差をわかりやすく整理
介護保険料が上がりやすい理由は、65歳以上が払う保険料を市区町村が3年ごとの給付見込みで決める仕組みで、高齢化や介護サービス費の増加が保険料に反映されるためです。
2026年5月8日時点で確認できる最新の全国集計では、第9期(2024年度から2026年度)の介護保険料基準額は月額平均6,225円です。前の第8期(2021年度から2023年度)の6,014円から、月211円、率にして3.5%上がりました。
- 要点1: 全国平均は第8期の月6,014円から第9期は月6,225円に上昇
- 要点2: 上がる主因は、高齢化に伴う要介護認定者の増加と介護サービス費の増加
- 要点3: 保険料は全国一律ではなく、市区町村ごとの見込み額で決まるため差が大きい
- 要点4: 2024年度からは65歳以上の保険料段階が国標準で9段階から13段階に見直された
何が変わったのか
まず押さえたいのは、今回の改定が一部の自治体だけの話ではないという点です。
厚生労働省が2024年5月14日に公表した第9期の集計では、全国1,573保険者の基準額(月額・加重平均)は次のように動きました。
- 第8期: 6,014円
- 第9期: 6,225円
- 増加額: 211円
- 増加率: 3.5%
ここがポイント: 介護保険料は「全国で一斉に同額改定」ではなく、各自治体が2024年度から2026年度の給付費を見込んで決めています。全国平均が上がっていても、あなたの自治体が据え置きや引き下げになることはあります。
なぜ上がるのか
介護保険料が上がる理由は、抽象的に言えば「高齢化」ですが、実際にはもう少し具体的です。
1. 75歳以上が増えると、介護サービスの利用が増えやすい
介護保険は地域保険です。厚生労働省は、各市町村が3年ごとに介護保険事業計画を作り、地域ごとの保険給付費の見込みに基づいて65歳以上の保険料を決める仕組みだと説明しています。
年齢が上がるほど要介護認定を受ける人は増えやすく、75歳以上の比率が高い地域では、サービス費が重くなりやすい傾向があります。保険料の上昇は、この給付見込みの増加と直結します。
2. サービス量だけでなく、単価も効く
保険料は、単に利用者数だけでは決まりません。訪問介護、通所介護、施設介護などの利用量に加え、介護報酬の改定も給付費に影響します。
新宿区は第9期の保険料改定の説明で、次の要因を挙げています。
- 高齢化の進展に伴う要介護認定者数の増加
- 認知症高齢者グループホームなど施設整備による利用量の増加
- 介護報酬改定の影響
つまり、「使う人が増える」「使えるサービスが増える」「サービス単価も動く」という3つが重なると、保険料は上がりやすくなります。
3. 65歳以上の負担分が決まっている
大阪市の案内では、第9期の介護保険財源は第1号被保険者(65歳以上)が23%、第2号被保険者(40歳から64歳)が27%を負担するとされています。
給付費が増えれば、その23%を担う65歳以上の保険料も増えやすい構造です。自治体が基金を使って一時的に抑えることはあっても、給付費の増加そのものが消えるわけではありません。
なぜ自治体ごとに差が出るのか
ここが、介護保険料を分かりにくくしている部分です。同じ日本でも、住んでいる自治体で保険料の基準額がかなり違います。
都道府県平均でも差がある
厚生労働省の第9期集計では、都道府県平均の基準額に次の差がありました。
- 大阪府: 月7,486円
- 沖縄県: 月6,955円
- 京都府: 月6,608円
- 山口県: 月5,568円
- 北海道: 月5,738円
大阪府平均と山口県平均では、月1,918円の差があります。年額にすると約2万3,000円差です。
市区町村単位ではさらに開く
同じ資料では、市区町村ベースの第9期基準額の低額・高額例として次が示されています。
- 低額例: 東京都小笠原村 3,374円
- 高額例: 大阪市 9,249円
- 差額: 月5,875円
この差は、単に「都市部だから高い」「地方だから安い」で片づきません。自治体ごとに違うのは主に次の点です。
- 75歳以上の割合
- 要介護認定率
- 施設サービスを含む介護サービスの利用量
- 住民の所得構成
- 介護給付準備基金をどこまで使うか
基金を使う自治体は上昇を抑えやすい
たとえば新宿区は、第9期の基準額を機械的に計算すると月7,433円になる一方、介護給付準備基金21.3億円を活用して月6,600円に抑えたと説明しています。
一方で、大阪市の第9期基準額は年額110,988円、月額換算9,249円です。横浜市は年額79,440円、月額換算6,620円です。
大都市同士でもかなり差があり、自治体の人口構成、サービス供給、基金残高、所得段階設計の違いが出ています。
誰に影響するのか
ここは誤解しやすいところです。
- 65歳以上の人: 市区町村が決める第1号保険料の対象
- 40歳から64歳の人: 第2号被保険者として、加入中の健康保険を通じて負担
この記事で見ている「自治体ごとの基準額」は、基本的に65歳以上の保険料です。40歳から64歳の人は、市区町村の基準額をそのまま払うわけではありません。
いつから適用されているのか
今回の保険料水準は、第9期介護保険事業計画の期間に対応しています。
- 適用期間: 2024年度から2026年度
- 開始時期: 2024年4月
- 見直し周期: 3年ごと
また、2024年度からは国の標準段階が9段階から13段階に増えました。狙いは、低所得者の負担上昇を抑え、高所得者側でより細かく負担を分けることです。
自治体によっては、国標準よりさらに細かい段階を設けています。
- 新宿区: 18段階
- 横浜市: 19段階
- 大阪市: 15段階
生活への影響
全国平均で見ると、第8期から第9期への上昇は月211円です。年額では2,532円の増加になります。
ただし、実際の負担は基準額そのものではなく、所得段階で変わります。つまり、生活への影響を見るときは「全国平均」より、自分の自治体の基準額と自分の所得段階を見る方が重要です。
影響の見方は次の順で十分です。
- 自治体の基準額が前期より上がったか
- 自分が何段階に入っているか
- 年金天引きか納付書払いか
- 軽減や減免の対象に入るか
必要な対応
保険料が上がったかどうかを確認するなら、やることは多くありません。
- 市区町村から届く介護保険料決定通知書で、自分の段階と年額を確認する
- 基準額だけでなく、実際の所得段階の保険料を見る
- 納付が重い場合は、減免や軽減制度の有無を自治体サイトで確認する
- 引っ越しをした場合は、新しい住所地の自治体基準額で見直す
特に、基準額だけ見て「自分も同額払う」と思い込むのは危険です。基準額はあくまで基準で、実際の年額は段階別です。
注意点
最後に、見落としやすい点をまとめます。
- 全国平均が上がっても、全自治体が一律値上げではない
- 第9期でも据え置きや引き下げの自治体がある
- 基準額は標準的な段階の額で、個人の実負担額とは一致しない
- 基金活用で当面の上昇を抑えている自治体は、次期改定で反動が出る可能性がある
- 40歳から64歳の人は、自治体の第1号保険料を直接払うわけではない
次に見るべき点は、2027年度から始まる次の計画期間で、75歳以上の増加、介護人材不足、基金の残高がどこまで保険料を押し上げるかです。介護保険料は「高齢化だから上がる」で終わる話ではなく、どの自治体で、どの世代の負担が、どの仕組みで増えるのかまで見ないと実感に結びつきません。
