賃貸の仲介手数料は家賃の何か月分?上限と初期費用の確認方法
賃貸住宅の仲介手数料は、貸主と借主が支払う合計で賃料1か月分の1.1倍(税込)が原則的な上限です。居住用物件で借主が負担する額は、事前の承諾がなければ賃料0.55か月分(税込)まで。借主が承諾した場合は、1.1か月分まで請求されることがあります。
ただし、仲介手数料だけを見ても契約時の支払総額は分かりません。敷金、礼金、前家賃、保証料、保険料、鍵交換費などを分けて確認する必要があります。
この記事は、2026年8月1日時点の国土交通省などの公開情報に基づいて整理しています。
この記事で分かること
- 借主が負担する仲介手数料の原則と上限
- 家賃5万円・8万円・10万円の場合の計算例
- 仲介手数料とは別に請求される初期費用
- 見積書、支払条件、申込取消条件の確認ポイント
- 長期の空き家に適用される特例の扱い
仲介手数料の上限は合計で賃料1.1か月分
通常の賃貸借の媒介では、宅地建物取引業者が貸主と借主から受け取れる報酬の合計は、賃料1か月分の1.1倍以内です。
この「1.1」は、賃料1か月分に消費税10%を加えた金額を表します。たとえば賃料8万円なら、貸主・借主から受け取る仲介手数料の合計上限は8万8,000円です。
居住用建物では、さらに借主と貸主それぞれの負担額に次のルールがあります。
- 事前の承諾がない場合:一方から受け取れる上限は賃料0.55か月分
- 借主が事前に承諾した場合:借主から賃料1.1か月分まで受け取れる
- 借主が1.1か月分を負担する場合:貸主からも受け取って合計上限を超えることはできない
国土交通省は、仲介を依頼する段階で、上限の範囲内の報酬額について説明を受け、合意しておくことが重要だと案内しています。
ここがポイント: 「法律上の上限が1.1か月分だから、借主は必ず1.1か月分を支払う」という意味ではありません。居住用物件の借主負担は0.55か月分が原則で、これを超えるには仲介依頼時の承諾が必要です。
家賃別の計算例
以下は居住用物件について、借主が支払う場合の税込額です。
| 月額賃料 | 0.55か月分 | 1.1か月分 |
|---|---|---|
| 5万円 | 2万7,500円 | 5万5,000円 |
| 8万円 | 4万4,000円 | 8万8,000円 |
| 10万円 | 5万5,000円 | 11万円 |
| 12万円 | 6万6,000円 | 13万2,000円 |
計算の基礎は「月額賃料」です。見積書に管理費、共益費、駐車場代などを含めた金額で計算されているように見える場合は、何を基礎にしたのか不動産会社へ確認しましょう。
「無料」「半額」もあり得る
告示が定めているのは受け取れる報酬の上限であり、全国一律の固定料金ではありません。不動産会社が仲介手数料を無料や0.55か月分に設定することもできます。
ただし、「仲介手数料無料」という表示だけで総額が安いとは限りません。別名目の費用や、短期解約時の違約金まで含めて比較することが大切です。
誰にこの上限が適用されるのか
上限規制の対象は、宅地建物取引業者が賃貸借の媒介・代理に関して受け取る報酬です。
一般的なマンションやアパート、一戸建てを居住目的で借り、不動産会社が貸主との契約を仲介する場面が中心です。
確認したいのは、見積書に記載された各費用の受取人と目的です。
- 仲介手数料:契約成立を仲介した宅地建物取引業者への報酬
- 敷金・礼金・前家賃:通常は貸主に支払う金銭
- 保証料:家賃債務保証会社との契約に基づく費用
- 保険料:損害保険会社などとの保険契約に基づく費用
- 鍵交換費や室内消毒費:作業内容や契約条件に基づく費用
名称が違えば、自動的に仲介手数料の上限規制から逃れられるわけではありません。一方で、実際に別のサービスへ支払う費用まで、すべて仲介手数料と同じ上限になるわけでもありません。
そのため、「誰に」「何の対価として」「いくら支払うか」を項目ごとに確認する必要があります。
ルールはいつから適用されている?
通常の居住用賃貸における0.55か月分・1.1か月分の基本的な考え方は現在も適用されています。
一方、2024年7月1日から、長期の空き家などを対象とする媒介報酬の特例が始まりました。現に長期間使用されていない、または将来にわたって使用される見込みがない宅地・建物が対象です。
長期の空き家には貸主側の特例がある
特例では、仲介に要する費用を考慮し、宅地建物取引業者が貸主から受け取れる報酬について、通常の上限を超える設定が認められています。貸主・借主から受け取る合計は、賃料1か月分の2.2倍以内です。
ただし、これは借主の上限が一律に2.2か月分へ上がったという制度ではありません。居住用物件の借主から受け取る仲介手数料は、事前の承諾がなければ0.55か月分、承諾がある場合でも1.1か月分以内という扱いです。
特例を適用する場合も、仲介の依頼時に報酬額の説明と合意が必要です。長く空いていた物件だからという理由だけで、契約直前に借主へ2.2か月分を請求できるわけではありません。
初期費用は仲介手数料以外も含めて見る
契約時の負担を左右するのは、仲介手数料より初期費用全体です。
東京都の消費生活情報では、一般的な契約時の費用として家賃、管理費・共益費、礼金、敷金、仲介手数料、保証委託料、保険料などが挙げられています。実際の項目と金額は物件や契約によって異なります。
入居前に支払う可能性がある費用
- 敷金
- 礼金
- 契約月の日割り家賃
- 翌月分の前家賃
- 共益費・管理費
- 仲介手数料
- 家賃債務保証料
- 火災保険・家財保険料
- 鍵交換費
- 室内消毒・抗菌施工費
- 24時間サポートなどのサービス料
敷金は未払い賃料や原状回復費用などを担保する性質があり、精算後に残額が返還される場合があります。礼金や仲介手数料とは性質が異なるため、「返ってくる可能性がある金銭」と「原則としてサービスの対価になる金銭」を分けてください。
入居後・更新時・退去時の費用も確認する
初期費用が低くても、住み続ける間や退去時に次の負担が発生することがあります。
- 保証会社の年間・月額保証料
- 火災保険などの更新保険料
- 賃貸借契約の更新料
- 更新事務手数料
- 月額サポート料
- 短期解約違約金
- 退去時のクリーニング費
- 原状回復費用
国土交通省も、署名前に入居時と更新時の費用、退去時の原状回復、解約の申入れ時期や条件を確認するよう案内しています。
家賃8万円なら総額はいくらになる?
同じ家賃でも、敷金・礼金や保証契約の条件によって初回支払額は大きく変わります。
たとえば月額賃料8万円、共益費5,000円の物件を想定します。次の数字は制度上の標準額ではなく、見積書を読むための計算例です。
例1:仲介手数料が0.55か月分の場合
- 敷金1か月:8万円
- 礼金1か月:8万円
- 前家賃1か月:8万円
- 共益費1か月:5,000円
- 仲介手数料:4万4,000円
- その他:保証料、保険料、鍵交換費など
その他を除いた小計は28万9,000円です。
例2:仲介手数料が1.1か月分の場合
ほかの条件が同じなら、仲介手数料は8万8,000円になります。その他を除いた小計は33万3,000円で、例1との差は4万4,000円です。
ただし、仲介手数料だけが安い物件でも、礼金や月額サービス料が高ければ総支払額は逆転します。比較するときは少なくとも次の3段階に分けましょう。
- 契約日までに支払う額
- 入居後1年間に支払う額
- 2年契約なら更新または退去までに支払う額
契約前に必要な対応
申込前に総額見積もりを取り、仲介手数料への承諾と各サービスへの同意を分けて確認するのが実用的です。
1. 仲介手数料の負担割合を尋ねる
次のように具体的に確認します。
- 借主負担は賃料の何か月分か
- 税込額はいくらか
- 貸主も仲介手数料を負担するのか
- 1.1か月分への承諾は、いつ、どの書面で行うのか
- 手数料の計算に使った賃料はいくらか
「仲介手数料1か月」とだけ書かれている場合は、消費税込みか税別かも確認してください。
2. 費用を必須・任意・条件付きに分ける
鍵交換、消毒、サポートサービスなどは、物件や契約条件によって扱いが異なります。不明な項目は次の3点を尋ねましょう。
- 契約に必須なのか、任意なのか
- どの事業者が何を行うのか
- 外した場合に契約できない理由は何か
借主が希望して依頼する広告や特別な作業など、通常の仲介業務とは別の費用が発生するケースもあります。口頭説明だけでなく、サービス内容と金額が分かる書面を受け取ると確認しやすくなります。
3. 支払時期と取消条件を確認する
仲介手数料は、基本的に賃貸借契約が成立したときの成功報酬です。一方、申込金や預り金を先に求められることもあります。
支払う前に、次の事項を書面で確認してください。
- 何の名目で支払うのか
- 契約成立前に申込みを取り消した場合は返金されるか
- 審査に通らなかった場合はどうなるか
- 契約成立後に解約した場合の負担はいくらか
- 返金時期と振込手数料の負担者
4. 口頭の説明と書類を照合する
広告、初期費用明細、重要事項説明書、賃貸借契約書、保証委託契約書、保険の申込書を並べ、金額と条件が一致するか確認します。
特に見落としやすいのは、更新料、短期解約違約金、退去時の定額クリーニング費、保証料の更新方式です。分からない文言があれば、署名前に意味と計算方法を尋ねてください。
注意したい誤解と例外
「1.1か月分までなら、どの請求も自動的に適法」と判断することはできません。
上限額と合意した金額は別
1.1か月分は通常の媒介報酬の上限であり、請求額を自動的に決める料金表ではありません。実際に支払う額は、上限内で不動産会社と依頼者が合意した額です。
承諾は契約直前ではなく仲介依頼時が基準
借主から0.55か月分を超えて受け取るには、仲介の依頼を受ける段階で借主の承諾を得る必要があります。申込画面や媒介に関する書面に承諾欄が含まれていることもあるため、チェックボックスを含めて内容を確認しましょう。
仲介手数料と別サービスを混同しない
保証料、保険料、鍵交換費などには、それぞれ別の契約相手とサービスがあります。単に合算額を見るだけでなく、内訳、必要性、返金条件を確認してください。
反対に、実態が通常の仲介業務への報酬なのに別名目で請求されている疑いがある場合は、説明と根拠を書面で求めることが重要です。
契約後の条件変更は難しくなる
重要事項説明や契約書を十分に確認せず署名すると、後から条件の変更を求めることは難しくなります。時間が足りない場合は、その場で署名せず、書類を持ち帰れるか相談しましょう。
見積書で最後に確認する7項目
比較すべきなのは「仲介手数料が何か月分か」だけでなく、入居から更新・退去までの総額です。
契約前に、次の7項目を確認してください。
- 仲介手数料の税込額と計算根拠
- 0.55か月分を超える負担への承諾時期
- 初期費用の必須項目と任意項目
- 保証料・保険料・サポート料の更新条件
- 契約更新時に必要な料金
- 申込取消・短期解約時の返金と違約金
- 退去時の定額費用と原状回復特約
まず確認したいのは、仲介手数料の欄に「賃料×1.1」と書かれているかどうかではありません。その金額への承諾がいつ行われ、ほかの初期費用と合わせて最終的にいくら支払うのかです。申込ボタンを押す前に、初回、1年間、更新・退去時の3つの合計を出しておくと、条件の違う物件も同じ基準で比べられます。
